文武両道と言う言葉が昔から使われてきました。中国の思想が元になっていますが、中国では伝統的に「文」を重んじ「武」を軽んじて来ました。しかし、日本では「武」も伝統的に大切にされてきました。
鎌倉時代となり、武家の世の中となってからは、一層発達して、武芸十八般とまで言われるようになりました。 弓矢、刀剣、槍術などが含まれますが、その中に柔術(やわら、腰廻り)があります。
柔術はもともと組み討ちの技で、「活法」と「殺法」に分けられ、殺法は武技そのもので、当て身、関節技、固め技などがあります。それに対して、「活法」は当て身で気絶した者の息を吹き返す事から始まりましたが、骨折、脱臼、打撲、捻挫などの外傷の治療法、さらに出血、仮死者に対する蘇生法など昔の外科医の分野が含まれます。
江戸時代には、「武」は武道として完成され、武士の精神的な支えとなり、その伝統は明治に受け継がれ、時代の変化とともにその一部は、近代的な思想の影響を受け、柔道や剣道のように競技として技を磨き、また教育の手段として活用され、世界中に広まっているものもあります。
一方、活法としての治療法は、本来の柔術に加えて、中国より伝来した挙法や中国伝統医学の経穴を取り入れ、されに、南蛮といわれるスペイン・ポルトガルの外科術、オランダの医術「欄方」等を吸収し、整骨術として確立されました。 以後、各流隆盛となり、名人輩出の時を迎えます。
今に残る「各務の木骨」(カガムという人が、当時は人骨を所有できないので、木で作った精巧な骨模型)をみても当時の学者の真摯な勉学態度がうかがわれます。
しかし、明治時代は、政府が西洋医学の導入を図ったため、整骨業は苦しい時を過ごさなければなりませんでしたが、徐々に大正・昭和と法的な整備がなされ、現在は厚生労働大臣による国家資格となっています。
学校のカリキュラムでは、人体に加わる力や損傷時の力学、各組織の損傷すなわち骨折、打撲、筋の損傷、腱の損傷、神経の損傷などの損傷学を学び、ついで治療法として整復法、固定法、後療法などを学び、さらに各部分(上肢、下肢など)への応用に進みます。骨、筋、靭帯などが対象で、かつ現代医学の用語も充分取り入れていますので、合理的で分かり易い学問分野となっています。
臨床においては、各世代の運動器疾患に応用されますが、最近では、人口の高齢化現象に伴い、老人の方々の介護分野にも適応範囲を拡げています。