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平成28年度卒業式式辞

2017年03月17日


式 辞

 

本日、この式場に集われた148名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。卒業式にあたり皆さんの今日までのご努力と研鑽とを、学校を代表して心からたたえます。また、この日まで、皆さんの勉学を支えてこられたご父兄、ご家族の皆さんにも、深く敬意を表したいと思います。本当におめでとうございます。

 

さて、本日私は、最も敬愛する柔道整復師のお話で「プロフェッショナル」についてお話をしたいと思っています。

先生は昭和32年に本学園の柔道整復科を卒業され、皆さんにとっても先輩にあたります。整形外科病院に勤務され、その後、接骨院を開業、現在も柔道整復師として患者さんの診療に携わっています。先生の診察を拝見していると、実に丁寧に患者さんの訴えを聞き、患部を触診し、損傷状態を判断し、正確に患者さんに説明しています。また、先生は60年近い経験があるにも関わらず、患者さんがいないときには、絶えず、ご自身の骨や筋肉を触り、皮膚の上から形状を把握する技術を磨いて、患者さんのための研鑽を怠らないのです。まさに「プロフェッショナル」です。柔道整復師が大好きな先生の口癖は「柔道整復師になった誰もが誇りを持ち、柔道整復師になって良かったと思える業界を作りたい。」であります。

 

先生の診察や徒手整復の技術は見事なもので、損傷部の状態を的確に判断したうえで、患者さんに最小限の苦痛を与えるだけで骨折や脱臼の整復をします。そんな先生が私に「細野君、今の学生さんは、診療の方法や徒手整復は十分に勉強していて、整復のことは良く知っていると思うよ。」と言います。先生は続けて「だけど、うまく整復できるかどうかは、技術が良いかどうかではなく、患者さんが本当にリラックスしているかどうかで決まると、最近になって、思うようになったよ。」とも言います。私も、経験からこの考えに同感で、うまく行かない徒手整復は、私自身が自分の技術に不安を感じていて、患者さんが私の微妙な変化を感じ取り、「安心して自分の体を任せられない」と感じていると思われるときに起こります。

 

以上のことは、治療の成否が施術者の技術の高さだけで決まるのではなく、大半は施術者が患者さんから信頼を得られたかどうかで決まることを意味していると思います。信頼を得られなかった施術者の治療は失敗に終わることが多いのです。技術が稚拙であって良いはずはありませんが、治療には技術以上に患者さんからの信頼を得ることが重要なのです。

 

先生の徒手整復の現場で緊張と苦痛にゆがんだ患者さんの顔が、思わず、ほほえむように緩んでしまい、ときには笑い出してしまうのは、長い臨床経験と絶え間ない努力によって形成された技術への自信と、人生経験によって磨き上げられた豊かな人間性に裏打ちされた、診察時の優しい心温まる態度と安心感を与えられる会話から生まれるものと思います。そして、その雰囲気を醸成することこそが患者さんの苦痛が最も少ない徒手整復を実現する、原動力になっていると思っています。

 

公益社団法人日本柔道整復師会の理事などを務め、業界の発展に寄与され、今でも、その将来を考え、様々な提言をしている先生でありながら、60年に近い臨床経験と努力を通して磨き上げた技術に満足することなく、治療の本質について考え続けていることに、私は、柔道整復師の本分を見せて頂いたのです。

卒業式の挨拶で必ず言われることに「卒業は勉強の終わりではなく、新たな勉強の始まりです。」という言葉があり、私も申し上げてきました。しかし、何が「新たな勉強」なのかを示されることは少ないと思っています。あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、灸師、柔道整復師になられる皆さんに、私は、本日以降、皆さんがしなければならない「新たな勉強」は、患者さんからの信頼を得るための人格の鍛錬であると申し上げます。あらゆる、疾患や損傷を抱えた患者さんに対面したとき、不安な気持ちである患者さんが安心感に包まれる雰囲気を醸成できる能力を身に付けることで、それができる者こそが、豊かな人間性を身に付けた施術者といえると思うのです。

これは、先生の話を伺って、医療人に必要な研鑽として疾病治療に関する知識や技術の修得ばかりがクローズアップされているが、重要なのは治癒に至るまでの患者さんの心理的な要素に配慮することではないかという考えに至ったからです。

 

豊かな人間性を身に付けた医療人とは、患者さんと誠実で謙虚な態度で接し、診察から知り得た情報は都合の良い解釈を加えず患者さんに伝え、自分が医療人として、できることできないことを正直に提示する。また、患者さんの人格を尊重し、個性を理解したうえで、医療人である優位性を誇示することなく、治療に参加できたことに感謝し、どのような階層の患者さんでも平常心で接する。さらに、自分自身の能力から治療法など、できることとできないことを正確に判断して、できる場合には自分で誠実に行い、できない場合には他の医療機関に依頼し、その場合であっても、悔やまず受け入れることだと考えています。そうした人格を支える根底は、平生「今日も、患者さんにとって幸せな一日になるといいね」という患者さんを第一に思う気持ちです。

患者さんの信頼を得られる人間性を身に付けるには、普段から驕り高ぶらず謙虚であり、他人ばかりでなく自分自身に対しても正直であることに努め、知識の修得や技術の研鑽には誠実に立ち向かわなければなりません。他者の行動や考え方を尊重し、自分の意見は臆することなく主張するが、決して相手に押しつけない習慣を付けること、常に感謝の心をもって日常の生活を送り、患者さんの治療でも治療に参加させてもらえ、技術が磨けることに感謝を忘れないことです。また、他者との比較ではなく自分を客観的に見つめる習慣を付け、医療人として自分に何が求められていて、何が足りないのかを、患者さんの立場に立って考える習慣を付けることです。

 

医療人は生涯に渡って「誰か」のために尽くすことが義務づけられた職業だと常に申し上げています。皆さんは、今、この観点に照らして正しい行動を採る必要があることを肝に銘じなければなりません。学校での3年間の勉学も、今後の研鑽も、全てが、「患者さん」のためにあることは明白です。身に付けた知識や技術は「患者さん」のためだけに使うもので、自分のために使うものではありません。また、皆さんは、そうした人格を備えなければなりません。そうであるならば、皆さんに怠惰な心が起こり、生涯にわたる研鑽を怠るなど、「患者さん」は断じて許すことができないはずです。

 

本校は平成26年3月に、文部科学省から職業実践専門課程に認定され、平成27年には私立専門学校等評価機構の柔道整復師養成分野に係る第三者評価モデル事業でも高い評価を戴きました。皆さんは、こうした評価を受けている学校の卒業生であることに誇りを持ってください。それと同時に卒業後も本校の名声を汚さないように努力を続けてください。

 皆さんには、私が最初にお話しした先輩のように自分の職業が大好きになって、「今日も、患者さんにとって幸せな一日になるといいね」という気持ちを基盤にし、心を込めて診療する医療人になって頂きたいのです。そして、人が困難に直面しているときや苦痛を感じているときに、困難や苦痛の本質を洞察することができ、深い思いやりの心もって接することのできる医療人としてのプロフェッショナルになって頂きたいのです。

春は別れのときであり、旅立ちのときであります。まさに皆さんは卒業という別れのときと、大きな夢をふくらませ、社会に一歩を踏み出す旅立ちのときとを同時に迎えています。皆さんには、今の気持ちを生涯にわたって失うことなく、社会の付託に応えられる医療人になることを目指して、知識・技術の修得と共に心の研鑽を積んで頂きたいと思っています。そのために必要があるときには、いつでも学校に戻ってきてください。呉竹医療専門学校は皆さんが自ら向上するための学びの場をいつでも開いておきます。

最後になりましたが、皆さんお一人お一人がこれからの長い生涯、幸運に恵まれ、悔いのない人生を送られることを祈りつつ、私からの式辞とさせていただきます。

呉竹医療専門学校 校長 細野 昇


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