2013年09月26日
私の祖父は群馬で灸専門の治療院をしていた。それを母が継ぎ、私と妹が3代目になる。私は小さい時から、お灸の熱緩和の手伝いをさせられていた。火の点いたモグサの周囲を、私が指でぐっと押さえて、患者さんが熱く感じないようにするのだ。
ある時、年配の男性の患者さんが、灸熱緩和する私に対して「したぐどだちな」とつぶやいた。「したぐどだちな???」何のことだろう?何を言っているのだろう?……私には「したぐどだちな」の意味がわからず、その患者さんが異邦人に思えた。思わず返す言葉を忘れて、黙り込んでしまった。返事をすることが出来なかった。
横にいた母が「そうですね。」と答えた。 ??? 「したぐどだちな」って何だろう?母は「したぐどだちな」を知っていた。なぜ知っていたのだろう?後で母に「したぐどだちな」を聞かなくっちゃ。「したぐどだちな。したぐどだちな。」私は忘れまいとして、「したぐどだちな」を何度も心の中で繰り返して覚え込んだ。
治療が終わった。いよいよ母に「『したぐどだちな』って一体何?」と聞こうとした瞬間、「そうだったのか!」私にはその言葉の意味がわかった。
患者さんは「下へいくほど(お灸は)熱いな−。」と言われたのだった。
お灸は下にいくほど熱く感じる。肩より腰の方がすえられて熱く感じる。さらに腰より足の方が熱い。患者さん達がいつも話していることではないか。早口で言われたせいだったのか、私には全然意味がわからなかったのだ。
妹が治療室に顔を出した。私は「『したぐどだちな』って言葉知ってる?」としたり顔で妹に尋ねた。
(文章:鍼灸科・鍼灸マッサージ科 専任教員 相田典子)
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