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くれたけこばなし(2)『魚の目の灸治療(その1)』

2013年07月25日


 私は今年度、助手として1年生の灸実技の授業に出ている。最初の授業の時、「魚の目がある人はいますか?」と学生に尋ねたら、何人かが手を挙げた。若い人にも魚の目がある人がいた。

 魚の目というと靴を履く足に出来やすいと思うかもしれないが、私は手の魚の目を治療したことがある。しかもお寿司屋さんの手の魚の目だ。

 ある時、家の近くのお寿司屋のマスターに「魚の目にいい方法はないですかね。」と聴かれた。左手の人差し指に海老のしっぽのトゲが刺さり、そこが魚の目になったという。何年も魚の目の痛みに苦しみ、2度も手術したが、痛みがとれない。辛いのはワサビがしみることだという。私は即座にお灸を勧めてみた。

 魚の目には目がある。その目を狙ってモグサを皮膚に直接立て、お線香で火をつける。魚の目にお灸をすえると初めは熱さを全然感じない。皮膚に直接モグサを置いて焼き切っても、全然熱さを感じないのだ。お寿司屋のマスターは涼しい顔をして、私がひねるモグサを見ていた。おおよそ“数十壮”もすえると、チョロチョロと熱さが皮膚の奥に届き出す。そしてとうとう「熱いっ!」とマスターが思わず顔を歪めた。魚の目の灸治療は熱くなった時が引き際である。私は治療を終了した。その日以来、私の注文するお寿司のネタが厚くなった。

(文:鍼灸科・鍼灸マッサージ科 専任教員 相田典子)

 

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