2014年06月13日
私の母は80歳を超えた。もう50年以上もお灸の道を歩んでいることになる。
先日、近所のYさんという女性が治療に見えた。左の肩こりが辛いとのことだった。触診させてもらうと、Yさんの左肩より右肩の方が凝っているように私には感じられた。
本当は右肩の方が凝っているけれど、患者さんは左が苦しいと言われることは時々ある。
私はYさんにお願いして、隣で治療していた妹にも肩を触診させてもらった。妹は「右肩の方が凝っているように思います。」とYさんに言った。
さらにYさんにお願いして、Yさんの主訴を伝えずに母に触診させてもらうことになった。
母がふわっとYさんの肩に手を置いた。そして、「あぁ、ここが苦しいですね。ここを楽にして差し上げたいです。」と言った。
母の指は左肩のある一点に置かれていた。Yさんは何度も何度も大きくうなずいた。
「全く修行が足りませんでした。」私と妹は小さくなった。
以上は、再掲載:くれたけこばなし(5)『高血圧(前編)』
ある時、50代の男性が初診で見えた。肩がこるとのことだった。母は触診した後、その男性にこう尋ねた。「腰は痛くありませんか?」
「腰は大丈夫です。」
「血圧は高くありませんか?」男性は「高くありません。」と答えた。
母はさらに丹念に腰の触診をして、「血圧はどのくらいですか?」と尋ねた。
「上(収縮期血圧)が120で、下(拡張期血圧)が70です。」母は「そうですか……」とつぶやき、続けて「ご両親は血圧が高くないですか?」と尋ねた。
触診を終えた時、母は「苦しいのは肩こりかもしれませんが、私は腰のこりが心配です。将来、血圧が高くならなければいいがと思っているのです。肩はもちろんのこと、腰もよく治療させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
治療が終わった。その人は治療が済んだ安堵感もあったのか、大きくため息をついてポツリポツリと話し出した。
120と70は降圧剤を飲んで測った血圧だっだ。両親も血圧が高く、共に脳出血で亡くなっている。自分もその体質を受け継いでいるのではないかとずっと不安でいたのだという。肩こりを楽にしてもらおうと思って治療に来て、まさか血圧のことを指摘されるとは思わなかったと話した。
母は腰を触診しながら、時々患者さんの血圧が高いことを言い当てることがある。同じように腰を触診しながら、「足に痛みが走りませんか?」とか「胃は悪くないですか?」とか血圧とは別のことを尋ねることもある。腰のこり方にもいろいろあるようだ。残念ながら私には全然わからない。
全く修行が足りません。
(文章:鍼灸科・鍼灸マッサージ科 専任教員 相田典子)
【その他のご案内】
★ 募集要項(学科・定員・学費)のご案内はこちらをご覧ください。
★ 奨学金・教育ローン(呉竹悠裕プラン)のご案内はこちらをご覧ください。
★ 「在校生・卒業生呉竹学園求人検索システム」のご案内はこちらをご覧ください。
【メッセージ】
医療、介護、健康産業、スポーツの現場など、東洋医学(はり、きゅう、あん摩マッサージ指圧、柔道整復)の技術と知識を生かせる領域は大変広く、将来に向けた大きな可能性があります。多くの仲間や先輩、そして信頼できる師との出会いを通じて、人間としても成長のできる分野です。「ひとのためになりたい」という志があれば、誰にでも、何歳になっても、学びの門は開かれています。卒前・卒後ともできるだけ多くの体験をして、その中から自分が真に輝ける世界を見つけて下さい!
卒業したらすぐに活躍してほしいから、呉竹医療専門学校では、Ⅰ部(昼間部)に全日制を導入。姉妹校(東京医療専門学校、呉竹鍼灸柔整専門学校)で培われたノウハウを生かして、効率よく国家試験対策を行いながら、在学中に臨床力を目一杯向上させるための授業を用意。Ⅰ部でトコトン勉強して、3年間で3歩先行く技術を修得。演習を中心とした実践的な授業で腕を磨けます。
働きながら効率よく資格を取得したい方。呉竹医療専門学校には鍼灸科と柔道整復科にⅡ部(夜間部)を設置しています。姉妹校(東京医療専門学校、呉竹鍼灸柔整専門学校)で培われたノウハウに基づく教育システムで着実に国家試験合格を目指します。学校附属の施術所の他にクリニックも併設されていて、卒後教育システムも充実しています。大宮駅西口から徒歩5分ですから通学も便利です(地図)。
当校は80余年の伝統ある呉竹学園のネットワークを生かした就業支援や生涯学習の場の提供を積極的に行っています。あなたも呉竹学園の一員となって、新しい時代を担う医療人を目指しませんか。