2013年11月12日
当時、私が勤務していた整形外科病院では骨折・脱臼の保存療法や手術までの間、患肢(けがをした腕や脚)を固定するのに金属副子※を使っていました。これを患肢の形に合わせて曲げるのは結構難しく、『ほねや』になって間もない私には到底うまく曲げることができませんでした。あるとき、終業間近の5時近くに踵骨(踵の骨)骨折の患者さんが来院して、診察の結果入院することになりました。すでに帰宅時間になっていたチーフのT.M先生は何を思ったか、この患者さんの固定に使う金属副子を曲げるのを「おメーやってみろ」と私に命じました。何度もやったことがない私は、慣れない手つきで金属副子と格闘を始めたましたが、なかなか思うような形になりませんでした。しばらく黙って見ていた先生は、ついに業を煮やし「よこせ!」と言う間もなく私からそれを取り上げ、毎晩のビールで多少膨らんだ腹と手のひらを使って、どこをどう曲げたのかも分からないほどの早業で、ものの1分も掛からずに作り上げてしまいました。そして「ほれ、これで固定しておけ」と言いつつその場を去って行かれました。包帯を使って固定してみると、患肢にピッタリ合っていて少しも直すところがない副子になっていました。これがお金を貰える技術なのだと実感したできごとでした。
※ 東大式の金属副子でクラーメル金属副子と異なり、やや太めの針金でできている(金網副子)
(文:呉竹医療専門学校 校長 細野 昇)
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